アトリエにあるお気に入りの物、魚の形をした筆置き
この鋳物の筆置きはもともと書道家の祖母の物でした。墨まみれで真っ黒だったので濡れた布で拭き始めたのでしたが、ここに残る祖母の記録を消してしまう行為であることにはたと気づき、途中で辞めたのでした。今では祖母が残した地色に私の黄色や激しい桃色の絵の具がちらほら加わり、コラボ感覚で楽しんでいます。私の最も尊敬するアーチストの一人でもある祖母は、90才半ばでホームに入るまでずっと書道を続けていました。最初はうんと若い頃にお稽古事としてお花やお茶とともに始め、一度は辞め、一人娘である母が成長してからまた習い始めたようです。祖父が早くに他界し、同居していたわれわれも海外に移り、一人暮らしとなった祖母にとって書道と庭の手入れが生活の中心でした。書道家として知名度を上げたり、儲けたり、といった事に全く興味のなかった彼女の好きな言葉が「精進」でした。
